井上雄彦 漫画展レポ3 -風姿花伝-

ここで突然話は世阿弥という昔の偉大な能役者の話に少し触れます。
彼は「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」という父の遺訓をまとめ
能楽論書『風姿花伝(一般的に広く知られている名は花伝書)』を著した事
でも有名ですが、その同著の中で「能役者が観客に与える感動の根源は『花』
である。『花』は能の命であり、これをどう咲かすべきか、『花』を知る事は
能の奥義を極める事である」と言ってるのですが、これは能の世界に限らず、
全ての創作世界に広く共通する概念や理想でもあります。

より分かりやすく、ここの『花』を再定義し直すと・・・
例えば野に咲く一輪の花の本質とは何処にあるのか? と考えた時に、それは
勿論花という存在そのものや、その花の美しさに本質の一端を見出す事が
出来るのですが、でも花自体は実は其処にただ在るだけで、花を美しいと
定義するものは、それを見た人の心の中に在るものなわけです。
そう考えれば花の本質は花だけではなく、それを見る事で花を見た人の心
の中にも本質が移動するわけで、その人が別の人にその美しさを形容する
事で、その本質は更なる伝播を広い世界へと続けて行くわけです。
だとすれば、花は1でありながら同時に僕達を包むこの世界全てでもある
訳です。 当に個にして全。全にして個です。

・・・全然分かりやすくなってない・・ですか? ・・そうですか(笑)


まぁ何が言いたいかというと、井上氏が武蔵の死生観を通して描き出そう
としたもの、伝えたかったものとは、ストーリーでも、キャラクターでも、
セリフが内包するテーマでも、漫画ですらもなくて、実はその『花』に当た
る武蔵の、井上雄彦自身の『本質』だったのではないかと言いたい訳です。
これは今回の漫画展に行く以前にサイトのOPで提供のFLOWERという
名前を見た時点で最初から感じていた事で、実は手前みそな話ながら以前
や現時点で僕のサイトを見た事がある方ならご存知の通り、僕がこれまで
自分の創作の中でずっとコンセプトとして同様に命題としてきた事でした。

だから僕も優れてるとかいう下らない話をしたい訳じゃないので誤解され
るとアレなんですが(笑)、優劣だとか、勝ち負けだとか、早い遅いだとか
いう瑣末な事柄を除いたとこで、創作をする人間はプロアマ(勿論、編集者
なども含む送り手全般を込みで)関わらず本来皆すべからくこういう感性や
姿勢を持っている(べき)はずで、そういったものを今回こういった形で大々
的にやれる事自体すでに表現者 井上雄彦の凄いところだと思うわけです。

偉大にして当たり前。その『自然』が壮大なのです。
例えば画力が見たいと期待して訪れた人なら、彼の週刊連載活動を通して
の中でしか磨かれえなかったであろう、氏の画力に驚嘆するでしょう。
例えば漫画の最終回を見たくて訪れた人なら、その最終回の生の迫力と共
に、漫画の枠を一歩踏み超えた氏の表現に新鮮な驚きを得るでしょう。

でも普段から同様に一つの表現やジャンルという形骸に拘らず、取り組ん
でいる人には、もしかしたら目新しい物は何も感じないかもしれません。
あるいは、もしかしたら今回の漫画展は同業種の絵描きより、イメージを
言葉に託す文章書きの方々の方がショックを受け易いのかもしれません。
楽しみ方も人それぞれ。感じ方も人それぞれです。

表現者 井上雄彦の真実(本質)は一つです。
でもその作品に対する答えは当然一つじゃありません。
見る人の数だけ。見た人達が心の中に持ち帰った花の数だけ答えが在ります。


近づいて食い入る様にセリフや漫画の流れを追うのもいいし、2回は見る
つもりだというなら1度くらいは僕の様に余計な情報を制限して、数歩離
れたところから作品が放つ『本質』を感じてみるだけなのもいいでしょう。
どうか自分なりの楽しみ方で井上氏の世界に淫し、酔いしれて下さい◎


どの様な見方をするにしろ、其処には井上雄彦氏自身が入り口の武蔵の様
に威風堂々と訪れた貴方を射竦めているはずです。



追記
1500円払って2時間半も並んで来たのに、終始えらく離れたとこから
しか見ない僕を、ずっと各スタッフさんが怪訝な表情で見てたのが印象的
でした(笑)。 しかも眼帯姿の変な客でスイマセン!!
しかも展示物に唯一近づいたのが出口付近売店コーナーの武蔵フィギュア
だけだった事も重ね重ねスイマセン!!
そして「バガボンド」も「スラムダンク」も読んだ事なくてスイマセン!!

何より何も知らないくせにレポートなんかスイマセン!! お粗末様でした!!
2008-06-29 : INSIDE VIEW : コメント : 0 :
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